デザインポートフォリオ
デザインを通して、人々の心を動かしたい。
その真摯な想いを形にしました。








瀬頭酒造 / 本醸造シリーズ
〔デザインコンセプト〕
このシリーズでは、日本の伝統文様「市松文様」を共通のデザインフォーマットとして採用し、現代的な感性で再解釈することで、シリーズ全体に統一感を持たせつつ、個々の商品の個性も際立たせることを目指しました。目指したのは、多くの方に親しまれる「本醸造」というお酒の持つ「親しみやすさ」と、瀬頭酒造様が守る「品質感」、そして「東長」ブランドの持つ個性を、明快かつ印象的に伝えることです。
〔シリーズ共通のデザイン哲学:市松文様への願い〕
デザインの骨格には、全商品共通で「市松文様」を採用しました。市松文様は、そのパターンが上下左右に途切れることなく無限に『広がっていく』様子から、「子孫繁栄」や「事業拡大」といった『広がり』の縁起を担う伝統文様です。私がこの『広がり』の意匠を選んだのには、手に取りやすい価格帯である『本醸造』だからこそ、文字通り多くの人々の手へと『広がり』、その魅力が多くの方々に伝わって長く愛され続けてほしい、という強い願いを込めています。4つの区画を持つ市松の構造は、情報を整理しやすく、シリーズとしての統一感を出すためのフォーマットとしても機能します。
色彩は、各商品を象徴するキーカラー(例:「マルヘイ」の青、「銀紋」のシルバー)と「白」の2色構成を基本とし、色による明確な識別性と記憶のしやすさを意図しました。
〔白地の区画と紋様の表現:UV加工による工夫〕
白地の区画には、色を使わず、透明なUV加工によって各商品を象徴する紋様を施しました。光の角度によってさりげなくその姿を現すこの加工は、一見したシンプルさの中に隠されたディテールとして、発見する楽しみとともに、触感的な面白さや、現代的な上質感を演出する意匠です。
〔揺るぎないブランド表現〕
シリーズとしての統一感を強固にするため、左上の区画には、躍動感のある「東長」の筆文字ロゴと朱の落款を共通で配置しました。これは瀬頭酒造様の揺るぎないアイデンティティと、受け継がれる伝統、そして品質への自信を象徴しています。
〔各商品の個性を表現:色と紋の由来〕
シリーズの中で個々の商品を明確に区別するため、以下の要素に変化をつけています。
キーカラー: 「マルヘイ青」では鮮やかな青を、「銀紋東長」では洗練されたシルバー(銀)をキーカラーとし、それぞれの商品の個性を直感的に伝えます。
象徴紋: 白地の区画に、透明なUV加工で控えめに表現された円形の紋は、商品ごとに異なります。
商品名表記: 右下の区画には、「MARUHEI BLUE」や「GINMON」といった各商品名を、読みやすいモダンな書体で明確に表示し、情報の正確性も確保しています。
〔シリーズ全体で目指したこと〕
この「東長 本醸造 シリーズ」のデザインシステムを通じて、伝統的なモチーフを現代のライフスタイルにフィットする、クリーンで機能的な形で提案したいと考えました。シリーズとして並んだ時の美しさ、選びやすさも意識しています。親しみやすさ(本醸造)と確かな品質(東長ブランド)、伝統と現代性、そして蔵元に縁のあるストーリー。これらの要素がバランス良く共存することで、市松文様の『広がり』に託した願いのように、日本酒初心者から愛飲家の方まで、幅広い層のお客様に手に取っていただき、長く愛されるシリーズとなることを願ってデザインしました。

瀬頭酒造 / 純米 冬の景色
〔デザインコンセプト〕
日本の冬ならではの静謐(せいひつ)で美しい情景と、そこに流れる澄んだ空気感を、情緒豊かに表現することを最も大切にしました。
〔ビジュアル表現について〕
メインビジュアルには、しんしんと雪が舞い降りる、幾重にも連なる山々の風景を描きました。これは、特定の場所を写実的に描くのではなく、多くの人が心の中に思い描くような、普遍的で静かな冬のイメージを形にしたものです。水墨画や版画を思わせる、日本の伝統的な美意識に根差しながらも、繊細な色の濃淡(グラデーション)とレイヤー(重なり)を用いることで、現代的な感覚にも響くよう、奥行きと静寂な空気感を演出しました。見た方が、心が洗われるような穏やかさや、冬の自然が持つ凛とした美しさを感じられるよう意図しています。
〔色彩計画について〕
冬の景色を最も象徴的に表現するため、色彩は意図的に抑え、彩度の低いグレーや、ほのかに青や紫を感じさせる寒色系の色調で全体を統一しました。これにより、落ち着きと静けさを強調しています。舞い散る細やかな「白」(雪)を画面全体に配することで、単に寒々しいだけでなく、清らかさや、このお酒自体が持つとされる「透明感」のある味わいを視覚的に表現するアクセントとしました。
〔タイポグラフィについて〕
蔵元の銘である「東長」の文字は、この静かな風景の世界観を尊重し、そっと寄り添うように縦書きで右下に配置しました。書体は、伝統的な筆文字の雰囲気を踏襲しつつも、過度に主張せず、風景に溶け込むような、すっきりとしたラインのデザインを選びました。これにより、多くを語らずとも感じられる品格と、奥ゆかしさを表現しています。
〔デザインに込めた想い〕
このパッケージデザインが、ただの容器としてではなく、手に取った瞬間から「冬の景色」という一杯のお酒が持つ物語や情景を感じさせ、飲む前の期待感を高め、そしてゆっくりと味わう時間をより豊かに演出する一助となれば、という想いを込めています。その佇まいから、品質の高さや、瀬頭酒造様の「正直な酒造り」への真摯な姿勢が、静かに伝わるようなデザインを目指しました。

瀬頭酒造 / 焙茶リキュール「琥珀」
〔デザインコンセプト〕
焙じ茶ならではの奥深い香ばしさと、熟成されたような豊かな時間、「琥珀」という名が象徴する深く美しい輝きを、視覚的に表現することを目指しました。
〔モチーフと色彩について〕
メインモチーフには、焙じ茶の原点である「茶葉」を選びました。単なる葉ではなく、温かみのある金属(ブロンズやカッパー)のような光沢を持たせることで、「琥珀」の持つ艶やかな輝きと、焙煎によって生まれる独特の香ばしさやリキュールとしての特別感を表現しています。
また、一部に深く濃い色合いの葉を組み合わせることで、焙じ茶の持つ味わいの「深み」や複雑さを象徴させました。葉脈のディテールにもこだわり、自然の造形美と上質感を演出しています。
背景は、深みのあるダークなグラデーションを採用し、中央の茶葉モチーフを際立たせるとともに、落ち着いた高級感と、夜のリラックスタイムに寄り添うような雰囲気を醸し出しています。
〔タイポグラフィについて〕
商品名である「琥珀」の文字は、その名にふさわしい存在感と普遍的な美しさを持つよう、縦書きで骨格のしっかりとした明朝系の書体を選びました。一方、「焙茶のお酒」などの説明テキストは、モダンで視認性の高いゴシック系の書体を用いることで、全体の印象を引き締め、現代的な感覚も取り入れています。白を用いることで、ダークな背景とのコントラストを高め、文字情報を明確に伝えます。
〔目指したこと〕
このパッケージを通じて、手に取った方が、焙じ茶リキュール「琥珀」の持つ豊かな香りと深い味わい、そしてそれがもたらすであろう贅沢で温かな時間を、飲む前から感じ取っていただけることを意図しました。自然の恵みである茶葉を、洗練された感覚で表現することで、伝統(焙じ茶)とモダン(リキュール、デザイン)の融合を感じさせる、特別な一本であることを伝えたいと考えています。

瀬頭酒造 / 抹茶リキュール「翡翠」
〔デザインコンセプト〕
このデザインでは、抹茶の鮮やかな色合いと瑞々しい香り、そして「翡翠」という名が持つ高貴で深みのある緑のイメージを、瑞々しいタッチで表現することを目指しました。
〔モチーフと表現スタイルについて〕
メインモチーフには、抹茶の源である、生命力あふれる「生の茶葉」を選びました。写真のような写実的な表現ではなく、水彩画を思わせる、透明感と柔らかさのあるタッチで描いています。この水彩画のようなタッチは、抹茶を点てた際の繊細さや、リキュールになった際の滑らかで心地よい口当たりを視覚的に表現しています。葉一枚一枚の色の濃淡や光の当たり具合を描き分けることで、自然な立体感と生き生きとした表情を持たせました。
〔色彩と背景について〕
色彩は、商品名「翡翠」と抹茶の色をストレートに表現する、鮮やかでありながら深みのある「緑」を基調としました。若葉のような明るい緑から、しっかりと色づいた濃い緑まで、様々な緑の諧調(トーン)を重ねることで、抹茶の豊かな風味と、翡翠という宝石の持つ奥深い魅力を表現しています。
背景にも同系色の濃淡や、水彩絵の具がにじんだような柔らかなテクスチャを用いることで、モチーフとの一体感を出し、全体として優しくナチュラルな雰囲気に仕上げました。左下には、キラキラと光るような表現をあしらいました。これは朝露に濡れた茶葉の輝きや、抹茶の微粒子が光を受けてきらめく様子をイメージしたもので、瑞々しさと品質感を高めるアクセントになっています。
〔タイポグラフィについて〕
商品名である「翡翠」の文字は、「琥珀」のデザインとの連動性を意識し、品格を感じさせる明朝系の書体を縦書きで堂々と配置しました。「抹茶のお酒」や英語表記などの副次的な情報は、モダンで可読性の高いサンセリフ系の書体を選び、主役であるビジュアルと商品名を引き立てるようにバランスを取り、シリーズとしてのデザインに一貫性を持たせました。
〔デザインに込めた想い〕
このパッケージデザインを通じて、抹茶リキュール「翡翠」の持つ、摘みたての茶葉を思わせるフレッシュな香りと鮮やかな色彩、そしてその奥にあるであろう上品な味わいを、飲む前から五感で感じていただきたいという想いを込めています。自然の恵みを丁寧に扱った上質さと、心が和むような穏やかな時間。そんな、少しだけ特別な体験をもたらしてくれる一本であることを、この瑞々しい緑のデザインで表現しました。

千徳酒造 / へべすのお酒
〔デザインコンセプト〕
宮崎育ちの柑橘「へべす」が持つ、太陽をたっぷり浴びたようなフレッシュな魅力と、弾けるような爽快感を、現代的で遊び心あふれるポップなビジュアルで表現することを目指しました。
〔主役のへべす:リアルな魅力〕
デザインの主役は、なんと言っても「へべす」そのものです。その瑞々しさ、爽やかな香りを最もストレートに伝えるために、果実のリアルな断面写真を中央に大胆に配置しました。鮮やかな果肉の色と、今にも果汁が滴りそうなシズル感が、口にした時のフレッシュな酸味や甘みをダイレクトに想起させ、味わいへの期待感を高めることを意図しています。
〔背景と色彩:ポップな対比〕
リアルな果実の写真とは対照的に、背景はフラットでグラフィカルな構成を選びました。鮮やかなターコイズグリーンと、心躍るような明るいピンクを斜めに大胆に分割。このカラーブロックの組み合わせは、へべすの持つ「元気さ」や「爽快感」、そして日本酒ベースのリキュールとしての「楽しさ」「新しさ」を表現しています。写真のリアルさと背景のグラフィカルな対比によって、モダンで強いインパクトを生み出し、店頭でも目を引くデザインを目指しました。
〔タイポグラフィ:楽しさと信頼感〕
商品名「へべすのお酒」の文字は、全体のポップなトーンに合わせ、ユニークで記憶に残るような、少しレトロな雰囲気も感じさせるブロック体のデザインフォントを採用しました。この書体が、日本酒ベースのリキュールとしての楽しさや、型にはまらない自由な魅力を伝えます。
一方で、左下に配置した製造元「千徳」様の名称は、伝統を感じさせる落ち着いた書体を使い、やや控えめに記しました。これにより、ポップなデザインの中にも、製品としての信頼性や、作り手の背景をさりげなく添えています。
〔デザインに込めた想い〕
このパッケージデザインを見た瞬間に、「美味しそう!」「楽しそう!」「飲んでみたい!」と直感的に感じていただけるような、ポジティブで明るいエネルギーを表現したいと考えました。宮崎県唯一の清酒蔵である千徳酒造が作る、フレッシュで新しい感覚の日本酒ベースのリキュールであることを、親しみやすく、心惹かれるデザインで伝えたい。ソーダで割って、あるいはカクテルにして、気軽に楽しむシーンが目に浮かぶような、そんなワクワク感を届けられるデザインを目指しました。